ニュージーランドプロジェクト

一年を通して旬の葡萄を届けるために
ニュージーランドで生食葡萄の栽培に挑戦

「南半球で作ってみたら?」
はじまりは妻の一言

私たち葡萄専心がこだわっているのは、旬ならではのおいしさを届けること。どうしたら旬のおいしい葡萄を一年通じて届けることができるだろうかと頭を悩ませていました。そんな時、女房がふと言いました。
「南半球で作ればいいんじゃない?」
そうだ、南半球だ!日本と真逆の気候の南半球なら、日本が冬の時季でも旬の葡萄を栽培できる!
ここから妻と私の挑戦が始まりました。

チリ、オーストラリア、ニュージーランド、南アフリカ、候補はいくつかありましたが、輸出方法や治安、栽培状況などを調べ、絞り込んだのがニュージーランドでした。
ニュージーランドは葡萄栽培は盛んですが、そのほとんどはワイン醸造用です。世界的に高い評価を得ているワインがたくさんあり、それはもちろん良質なワイン醸造用葡萄をつくっているから。ワイン用の良質な葡萄がつくれるところなら、生食用のいい葡萄がつくれないわけがない。そう確信し、ニュージーランドでの葡萄栽培に向けて動き出しました。

出逢ったのは、天然の雨除けハウスのような
理想的な栽培地だった

ニュージーランドでは北島のオークランドにハミルトン、マタマタなど、葡萄栽培が行われているさまざまな地を巡りました。(皆様、ここで勘違いしないでください。ここは南半球!北のほうが暖かいのです。南島では生食用ブドウの栽培に必要な積算温度の確保ができないのです。)
視察を重ねるなかで出逢ったのが北島東海岸のホークス・ベイです。その地に着き、風の匂いや土の香りを感じた瞬間、「ここだ!ここしかない」と直感的に思いました。

調べてみると、ホークス・ベイはまさに理想的な栽培地。天然の雨よけハウス(サイドレスハウス)のような環境です。降雨量は年間800mlで、日本で最も雨の少ない山梨よりもさらに少ない。またホークスベイは冬の降雨量が多く、収穫期になる夏は雨が少ないという最高の条件。当然湿度もとても低く、さらに日照時間は日本一の山梨を大幅に上回るという信じられないほどの好環境。迷わずこの地に決めました。

知り合いもつてもない
でもここで栽培するんだ

ホークス・ベイに畑をつくることを決めたといっても、知り合いがいるわけでもなければ、つてがあるわけでもありませんでした。
まずは現地の葡萄栽培について情報を集めるために、ネットで見つけたニュージーランドで数少ない生食用葡萄を栽培しているグループ「テーブルグレープアソシエーション」にアプローチするところから始めました。英語に長けている友人の助けも借りながらどうにか連絡を取ることができ、彼らの案内でニュージーランド国内における生食用葡萄の情報を集めるために栽培している農家を訪ねました。
オークランド、ハミルトン、マタマタと各地の数少ない生食用ブドウ農家を巡るたびにカルチャーショックを受けました。驚きの連続でした。

ホークス・ベイで土地探しをはじめて間もなく、ネーピアの隣町クライブという町で畑によさそうな土地を見つけました。もちろん、つてはありません。そこでニュージーランド大使館の力を借りようと思い立ったのです。
友人の力も借りながら、「ニュージーランドで葡萄を栽培したいんだ」という強い想いで大使館にアプローチしたところ、プレゼンができることになりました。プレゼンを聞いてくださった在日NZ大使は私たちの取り組みにとても興味を持ってくださり、現地の人を紹介してくれました。そこから土地のオーナーへと話がつながったのです。

2014年にまず0.5haの畑を借りました。ニュージーランドでは畑は大規模経営が主流であり、小さい土地を借りるのは至難の業です。でも好運なことにオーナーがサンデーファーマーで小さな畑をやっていたので、そこを借りることができました。気候も栽培条件も違うニュージーランドの地で私たちが作りたい葡萄をつくることができるのか、まずは2年間を試行期間として葡萄栽培をスタートしました。

さあ、いよいよ畑づくり
思わぬ誤算も!?

畑づくりはまず、葡萄棚をつくることから始まりました。現地の葡萄畑は垣根式ですが、生食用のおいしい葡萄をつくるには、たくさんの太陽の光を浴びることができる平棚が必須。日本の栽培地と同じ「甲州平棚」をつくり、現地で栽培されている巨峰、バッファローの苗を植えました。
ニュージーランドでの栽培は、いい意味での想定外がいくつもありました。日照時間が長く、昼夜の寒暖差も大きいホークスベイでは、着色系の葡萄は日本では考えられないくらい容易に着色します。紫外線は日本の7倍ほどあるのですぐに日焼けしてしまいます。ですがその紫外線のおかげでポリフェノールの含有量が多い上に味もよい。また湿度が低いので病気もとても少ないんです。(なんと、防除は日本の2分の1以下で済みます)
2年間栽培してみて、迷いなく栽培継続を決心しました。

地元のファーマーズマーケットから
高級デパートへ

2016年には畑をさらに増やし、全部で1.5haを借りました。収穫もできるようになり、まずは現地の人たちの反応を知りたいと思い、地域のファーマーズマーケットに出店しました。
ヘイスティングス(Hastings)とネイピア(Napier)では年間を通してかなり大規模なファーマーズマーケットが毎週開かれています。チーズや、果物、野菜、花など地域のさまざまなプロダクターが出店してとても賑わいます。新規参入者にもやさしく、私たちも店を出すことができました。葡萄を出店しているお店はほかにもありましたが、ニュージーランドでは生食用でも種なし葡萄はほとんどなく、そのうえ“ジャパニーズメソッド”で栽培している私たちの葡萄は高い注目を集めました。試食をしてもらうと、その6~7割の方が買っていってくれました。
現地のファーマーの葡萄が1kg5~8ドルに対して、私たちの葡萄は1kg20ドル。3倍ほどの価格にもかかわらず飛ぶように売れました。私たちが育てる葡萄は、ニュージーランドでも喜んでもらえるおいしさであることが確信できました。

毎週ファーマーズマーケットで高い人気を集める私たちの葡萄は、ファーマーズマーケットが発行している機関紙に取り上げられ、ヘイスティングスとネーピアだけでなくホークス・ベイ全域にも知れ渡り、さらに地方発の記事として全国版でも取り上げられました。
その記事をきっかけに、オークランドやウェリントンの高級フルーツ店などからも取引の依頼が寄せられ、取引先が次々と増えていきました。最近では、日本式で栽培された種無し巨峰が爆発的な人気となり、国内及び海外からオファーが殺到しています。今後植え付けられていく他の日本品種がとても楽しみです。

いよいよ輸出スタート
いずれは東南アジアから世界へ

2019年からはトライアル輸出として、日本への輸出を開始しました。日本でハウス栽培ものも貯蔵ものもない端境期の2月下旬~4月上旬に、夏のニュージーランドで栽培した旬の葡萄を提供しました。予測通りの大反響でした。現在の輸出先は日本と香港だけですが、既に東南アジアからもオファーがあり、最初は東南アジアをメインに展開していく計画です。そしていずれは世界へと考えています。
いよいよ本格始動した私たちの「ニュージーランドプロジェクト」。今後の展開をぜひ楽しみにしてください!!!